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公開日:2020.12.17 更新日:2024.04.23

空き家・空き店舗はこうやって生まれ変わる! 後継者のいない商店オーナーの挑戦が街を変えていく

かめやキッチン 正面
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空き家がシェアキッチンに大変身!商店街での活用事例でご紹介したシェアキッチン「かめやキッチン」。空き店舗活用に至った契機は、商店街のまちづくり会社からのご相談でした。今回は、ご相談者である「まちづくり大山みらい株式会社」エリアプロジェクトマネージャー:熊谷慎一氏(以下、敬称略)、株式会社ジェクトワンが手がける空き家活用事業「アキサポ」の担当者の印南、石井が当時を振り返り、空き家をどう活かしていったのか、語りつくします。

傘寿を超えたオーナーによる新たな挑戦

《写真:左奥から時計回りに熊谷慎一氏、印南、石井》

石井:熊谷さん、お久しぶりですね! 「かめやキッチン」がオープンしてからまだ間もないですが、約1年ちかく濃い時間を過ごさせていただいたので、なんだかすごく久しい気がしちゃいます。

熊谷:たしか最初に問い合わせをして、商店街の事務局で打ち合わせをしたのがちょうど2019年の11月頃でしたね。初めて石井ちゃんに会った時は、若い威勢の良い女の子が、大勢の商店街の重鎮相手十数人を前に一人で乗り込んできてびっくりしましたよ。

石井:私も当時はとても緊張しながらプレゼンをしたのをよく覚えています(笑) 一番初めは、同じ年に豊島区南長崎でオープンした「コマワリキッチン」を見て、御社側からお問い合わせしてくださったんでしたっけ。

熊谷:そうそう。元々、まちづくり大山みらい株式会社という会社は、ハッピーロード大山商店街という都内屈指の大きな商店街の振興組合が100%出資という形で出来できた会社なんだけれど、主に商店街のテナント運営や広告だとか、まちの活性化のため為に事業を展開しているんですよ。

印南:商店街さんが御社のような「まちづくり会社」をつくられること事は最近増えてきましたよね。振興組合だけではなく、会社として地域・人的資源やノウハウを蓄積することで、地域活性化により繋げられるひとつの形だと思います。

《閉店前の履物屋「かめや」の様子》

熊谷:履物屋「かめや」のオーナーからご相談があったのは、2019年の夏頃ですね。足腰が不安定自由なオーナーから、80年近く続けてきたお店を閉店する、ついてはせっかく折角なので街に何か貢献出来できる形でお店を役立てられないか、とまちづくり会社へ相談いただいたんです。

石井:オーナーはもう80歳以上のご高齢からの新たな挑戦ですよね。そのご決断がすごいと思います。

熊谷:ちょうど物件が、商店街を横断して再開発される地域のすれすれのところにあったんですよ。そのため、これからも残る街の風景でもあった。だから、オーナーも「地域貢献」への舵を切れたんだと思います。

石井:店終いした後も、オーナーの生まれ育った街に貢献し続けていきたいという熱い想いが伝わってきました。

熊谷:今回の物件自体も、市場の流通価格よりも安く貸し出してくださっているので、熱さも覚悟も伝わってきましたよね。ありがたいと思っています。

地域密着型のアキサポが提案する、街にあった活用・運営

印南:御社側だけで、何かプロジェクトを企画するってことは考えられたりしたんですか?

熊谷:実は数年前に、すぐご近所で商店街が企画・運営して育児世代向けの「すくすくカフェ」というものをやってみたんです。でも、商店街のメンバーは、それぞれ自分の商いがあるし、当時は色々問題が積み重なってしまい、閉めてしまった。新しいことを始めるとなった時に皆多少トラウマがあったんですよね。
ぼくは、これまで全国で地域活性化のためのエリアマネジメントを積み重ねてきた経験もあるので、サブリースの方法だとかの知識を商店街の皆さんに説明させていただいたんです。その一環で、自社でテナント貸しするという案も上がったのですが、現状の商店街はナショナルチェーンが多いので、より個性的な店舗を将来のためにも誘致した方が良い、という結論に至りました。

石井:そこで私たち「アキサポ」にお問い合わせいただいたんですね。

熊谷:空き家活用に対してのノウハウもあるし、自社で企画・改修・運営するだけの会社の体制もありますよね。それで白羽の矢を立てさせていただいたんです。

石井:他にも空き家活用と銘打っている会社は複数あると思うんですが、検討していただいたのは私たちジェクトワンだけですか?

熊谷:ぼくの立場としては、色んな視点で検討した方が良いと思っていたので、他にも色々な企業があることは皆さんには紹介しましたよ(笑)  でも、コマワリキッチンの事例等もあったし、御社の取り組みについて石井ちゃんから熱く説明してもらったので。

石井:初めて事務局にお伺いした時は、ジェクトワンの企業理念である「想像を超える『場』をつくり、あたりまえにする。」という信念を強くお伝えした覚えがあります。

ジェクトワンには、3つの大きな事業があり、

・街の土地・建物を開発する「ソリューション事業」

・マンションのリノベ・再販を行う「リノベーション事業」

・空き家活用(アキサポ)の「地域コミュニティ事業」

これらは一貫して、その地域に合わせて活用方法を変え、ご提案しています。今回の旧「かめや」さんは、まさに街の中に欠けてしまったパズルのピースをどのようにはめるかを考える事業でしたね。ご指示いただいてから、結構考えました。

印南:本格的な事業検証は2020年の1月からでしたね。

石井:そうそう!検証開始の場所は、大山の商店街にあったしゃぶしゃぶ屋さんでしたね。今は再開発でなくなってしまって、本当に残念ですが、昼間からたくさんの人がランチに来ている姿を見て、こういった個人商店がもっと育ったら良いのになと思ったんです。

印南:あそこを始め、色んな飲食店で人の様子を見たり、ちょっとお店の人とお話しさせてもらったりして、「ああでもない、こうでもない」と悩みました。結果、堅実な案も含めて3案ほど、ご提示させていただきましたね。

熊谷:その中では、一番我々がやりたいと考えていたことに近かったのが、シェアキッチンだったかな。でも、提案を受けた後、新型コロナウィルスの蔓延で、緊急事態宣言になってしまったんだよね。お互いどこから手を付けようか、となって様子見していた時期もあったけれど、現地調査とオーナーへの提案・了承までやっとこぎつけたのが、6月頃かな。

石井:やっと契約できたのが、7月でしたね。ただ、これだけ大きくて、しかも歴史のある商店街が、オーナーも含め新しいことを始めようとするのって、なかなかハードルがあったのではないでしょうか?

熊谷:もちろん商店街には高齢の方も多いけれど、他の商店街に比べると、若い世代もいる地域だからね。やはり街を盛り上げるためには若い人の力、感覚は必要なのかなと思います。

石井:熊谷さんも、外部で活動されてこちらの商店街には業務委託を受けていらっしゃるんですよね?

熊谷:そうですね。商店街内の比較的若者に近い年代にあたるので、外部の立場から風通しの良い環境づくりをしてあげることで、商店街に新しい試みを持って来られるように促しています。アキサポは、大手デベロッパーのコンサルティング事業よりもより我々に対して親身になって取り組んでくれるのが、ぼくの立場にも近くて良いと思っていますよ。

印南:商店街の皆さんとも、オーナーとも、向かうべき方向性を共有することができて、時間はかかりましたが、割と苦労なく進んだイメージがありましたが、どうでした?

石井:コロナによる緊急事態宣言前後の意思疎通は少し互いに模索している感じがありましたよね。

熊谷:そんなこともありましたね。皆さん自分の商売や再開発関連等でとても忙しいのもありますし、その中での新しいチャレンジだったので、どう進めようかうちの方で模索していた感じはありましたね。

石井:コミュニティの違いを大いに学びました。

印南:それ以外ではあまり苦労はしなかったかな?

《イートインスペースの様子、レトロな建物の良さをそのままに活かしたデザイン》

石井:デザインは、この新型コロナウィルスの状況下もあり、キッチンを一つにして広々と接客できるような場所にしてもらいました。あとは経年変化を楽しめるように銅板を貼った照明を用意したり、既存建物を上手く利用していった感じですね。あとは、もうひたすらオープン前の準備が大変でした…。

印南:うちのシェアキッチンは、備品が一通りそろっているからね。細かい買い出しや店舗デザインに合わせたアンティーク椅子などを揃えていたのは覚えています。

石井:本当に大変だったんですけど、オープンして、街の人が皆覗きに来てくれるのはすごく嬉しかったですね。

店舗住宅の構造の課題とその解決

《キッチンイベント時の様子、明るいネオンと愛らしいデザインの亀のマークが映える》

熊谷:店舗のロゴもよく褒められますよね。

石井:あれは、最初はもっとポップな感じに亀がフォークとスプーンをもって舌出している…みたいなデザインになる感じだったんです。でも、オーナーから履物の裏に亀の刻印を押して販売していたってお話を伺って、その刻印をリデザインさせていただいたんです。

印南:オーナーもご家族にも、とても喜んでいただきましたね。

石井:すごく嬉しかったです。あとは、個人的にこれから店舗住宅の活用に良いんじゃないかと思っているのが、今回のような2階にあるオーナーの私用スペースと1階の転貸スペースの共存ですね。

《普段は施設に入所しているオーナーだが、定期的に2階にある荷物や仏壇の清掃に滞在している》

熊谷:建物は昔ながらの、店舗側の入り口と、裏口しかない作りですよね。

石井:そうです。転貸スペースとの境界が難しくて、二階のオーナーの住居部分との兼合いが難しいと思うんですが、思いきって裏口の鍵は完全共用にしてもらったんです。2階は、階段を上がった所にもう1つ鍵付きのドアを付けさせていただいたので、オーナー以外は出入りできないようにしてあります。オープンしてから、何度かオーナーも出入りされているようですが、上手く共存いただいているみたいです。

熊谷:こういった店舗住宅は多いからね。共存が図れるようにできると良いですよね。

石井:このエリアでいうと、通常とは逆の発想で空中階の空き家部分をもっと有効活用したら面白いかもしれないですね。たとえば…(以下、担当の妄想が続くため割愛)

地域貢献の在り方についてより深掘りして取り組みたい

印南:オープン以降の課題等も色々見えてきましたね。

熊谷:店舗の見た目がとても良いので、商店街サイドの期待が高すぎるのはありますね。何でも、かめやキッチンがあれば解決できちゃうかも…とか。役割をしっかり明確にして、上手く地域振興にも生かしていきたいですね。

《オープニングイベントで熊谷氏と石井が登壇した様子》

石井:新型コロナウィルスの猛威もかなり深刻なので、キッチンという業態での課題は多いです。まずは店舗として、このコロナ禍でも「ここでチャレンジしてみたら、上手くいけるかも」と思ってもらえるような体制を商店街と組みたいですね。あとは、もっと店舗別のブランディングの必要性を感じています。

印南:というと?

石井:新規事業を展開するときのあるあるだと思うのですが、商品に価値があるから売れる、と思いがちなんですよね。「美味しいお惣菜」、「高級品を使ったお弁当」、「特殊な製法」、これらはいずれ新しいものが生まれ、淘汰される可能性がある。それじゃ、個人商店として生き残れないと思うんです。大切なのは、お店全体をオーナーがどんな哲学をもって、モットーを貫いているかじゃないでしょうか。これからますます激しくなる経済格差の中で、唯一無二で愛され続けるためのブランディングをこの店で培ってもらえたら、そのお手伝いができたら良いなと思います。

熊谷:なかなか難しい課題ですよね。

石井:せっかく、歴史があり人気のある商店街さんとのコラボが実現したので、来年以降もっとその可能性を模索して、より良い店舗にして、沢山の方に使っていただきたいですね。一言で地域貢献といって済ませるのではなく、もっと課題について深掘りして取り組んでいきたいと思っています。

印南:頑張りましょう!

▼アキサポが手掛けた空き家活用の実例はこちらの記事でも紹介しています。

スタッフ紹介

印南俊祐(シニアマネージャー)

二級建築士、宅地建物取引士。地場の工務店で現場監督の経験後、大手デベロッパーにてリノベーション事業で200棟以上のリノベーションの施工管理を担当。2020年1月より株式会社ジェクトワンに入社。現在は、建築の現場の経験を活かし、空き家の問題解決に取り組んでいる。

石井萌奈(空き家活用プランナー)

宅地建物取引士。立教大学文学部文学科卒業。不動産仲介会社における売買仲介営業を経て、2018年5月より株式会社ジェクトワンにて空き家活用プランナーとして従事。豊島区官民連携型シェアキッチン、ブックカフェ「ふるいちトキワ荘通り店」、かめやキッチン等の地域に根差した活用を提案している。